前回は「ステークホルダーごとに目的は同じでも、そこにたどり着くまでの理想とする過程がそれぞれ異なり、要件定義がうまくいかない」という話をしました。
それでは、具体的にどのような問題が出てくるのかを見ていきたいと思います。
まずはプロダクションの外側、「クライアント」や「広告代理店・営業担当」との関係で、要件定義がスムーズにいかなくなる要因を説明します。
▼ 前回の記事
機能と費用の不釣り合い
やっぱり一番は、「お金」の問題です。
クライアントの要求する機能と、予算が釣り合わない場合に要件定義が中々決まり切らず、スケジュール通りに進まなくなってしまうケースがあります。
例えば、
「管理画面からブログのように投稿をする機能が欲しい」
という要望があった場合には、CMSというシステムを導入する必要があり、実は結構大変です。
ところが極端な話、予算が20万円しかない…という場合には、システムを導入する費用と割が合わず諦めるかほかの手段を考える必要があります。
クライアント内の政治
クライアントの上申がうまくいかないケースがあります。担当者レベルが出てくるMTGでは合意が取れたものの、そのクライアントの上司からNGが出てしまい、要件の組みなおしになるケースは多々あります。
例えば、「会社としてその情報を出すかどうかは上層部の判断が必要」のような場合に、
「やっぱりその情報は載せないで!」のように要件あとから変更になってしまうパターンがあります。
クライアント側のリテラシー
ITリテラシーの低いクライアントの場合、実際に実装した後の画面を見たりプレビューアプリをいじったりして、そこから「思っていたものと違う!」となり、そこから要件が変更になってしまうことがあります。
(もっともリテラシーが十二分にあるクライアントでも、実装した後に要件の変更を依頼されることはありますが…)
広告代理店内の政治
広告代理店が絡む場合、信じられないタイミングで要件が変更になるケースがあります。
広告代理店は非常に特殊な組織です。
まず「営業統括」という、ものすごく権力を持った方がいます。
彼らが、営業担当がOKを出したものに対して、スケジュールや工数を完全無視でひっくり返してくるケースがあります。
また、広告代理店にはAD(アートディレクター)やらCD(クリエイティブディレクター)やら何だか製作物のデザインや見た目にこだわりがありそうな人たちがいます。(ロバート秋山のクリエイターズファイルに出てきそうな人たちが登場します笑)
広告代理店の中では彼らの意見は、(有名な広告賞をとっている方の場合は特に)神の啓示のごとく扱われ、場合によってはクライアントの意向よりも強い場合もあり、彼らの意向が勝った場合は、完全にクライアントから合意が取れたものに対してすらNGを出してくるケースもあります。


現に筆者はWebサイト公開の5時間前に
「サイト内で使用しているフォントのスタイルを変更してほしい」と広告代理店のADから依頼があり卒倒したことがあります笑
スケジュール問題
当然時間的な問題も出てきます。
Web制作のスケジュールは初めから公開日が決まっているケースが多く、
そのスケジュールを順守して実装に時間を割くためには、要件定義のフェーズを
削らざるを得ないことが多いです。
前回説明した通り、
クライアントは「お金を出しているんだから早く作ってほしい!」
広告代理店や営業担当は「こんなに早く作らせたんだぜ!クライアントにアピールさせてくれ!」
という思惑があり、スケジュールは妥当なものより、早く作ってほしいと言われることがほとんどです。
まとめ
今回はクライアントと広告代理店・営業担当とプロダクションの外でかかわる人たちとの要因で要件定義がうまくなくなってしまうケースを見てきました。
今回見てきた要件定義がうまくいかない要因
・必要な機能と予算のつり合いがつかない
・クライアント内の政治に振り回される
・クライアント側のリテラシーによるイメージの共有不足
・広告代理店内の政治に振り回される。
・スケジュールが足りなくなる。
実は外的要因だけでなく、プロダクション内部のコミュニケーションによっては要件定義がうまくいかなくなるケースもあります。
次回はそんな事例を見ていきたいと思います。
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